演劇は複数の人間・芸術分野のコラボレーションから成り立つ芸術だが、一つの劇をつくる際に必要な様々な部門の中でも、演出家は戯曲の
解釈、コンセプトや作品の芸術的方向性、表現手法などについて具体的なヴィジョンを持ち、なおかつ最終的な決定権を握っている。
通常、演出家が最も長い時間過ごすことになる仕事の現場は稽古場である。演出家は稽古場での稽古を取り仕切り、俳優の戯曲の解釈をサポートしたり、彼らの演技を演出家の持つヴィジョンに沿う方向へと導いていく。この稽古の過程で、俳優の演技や他の舞台スタッフの提案したプランに影響されたり、時には予算の問題などによって、初期コンセプトに変更が加えられることもある。
以上の説明は、カンパニーの持つ方法論によってかなり異なる場合があることも付け加えておく。例えば、主演俳優である座長が最終的決定権を握っているような場合もあり得るし、戯曲を用いずに
集団創作していくカンパニーでは、当然ながら演出家の第一の仕事は戯曲の解釈ではない。また、公演期間中における作品クオリティの維持を、舞台監督ではなく演出家が管理するカンパニーも少なくない。
「演出」とクレジットされることが多いが、「監督」「ディレクター」「アニメーション・ディレクター」などと呼ばれることもある。アニメにおける演出家の仕事は映画監督同様、脚本を映像化するにあたっての指揮・監修である。まず、監督は脚本を咀嚼し、場合によっては脚色を行なう場合もある。次に脚本を元に
絵コンテを作成する。演出家の他に絵コンテ担当がいる場合もあるが、そういった場合でも絵コンテの作成には監督の意向が深く及んでいることがふつうである。絵コンテを元に
作画監督によりキャラクター・デザイン(専門職がいる場合も)、レイアウト設定(専門職の場合も)が、
美術監督により美術設定が行なわれる。作画監督の責任下で、
原画、
動画が作成され、美術監督の責任下で背景画が作成される。その後、撮影、特殊効果、録音、編集と進むが、すべてにおいて演出家は完成度の責任を持つ。特に編集や録音は作品の出来映えと大きくかかわるため、演出家は深く関与することが一般的である。